支援者のひとりごと

障害者福祉・高齢者福祉にたずさわり感じたこと思うままに

どうか自分を責めないで障害児を育ててる親御さんへ

私が利用者Aちゃんと出会ったのは1年前。

 
サービスの内容は食事介助と入浴介助だ。
座位は自力で保てる。ただ長時間は難しい。座るときはお腹にベルトをし椅子に固定をする。自発的に動くことはできず、手足を動かしたり、1日の大半は横になっている。表情はあるが言語は、“あー”や“うー”といった言葉を発するのみ。いわゆる言葉のコミュニケーションをはかることはできない。
 
だが、こちらの言ってる言葉やその場の空気を察することに長けていると感じた。どんなに熱があっても痛くても嫌なことがあっても言葉での拒否はできず、泣いて訴えることしかできない。
 
その泣き声に耳を傾けること、自分の子供が障害をもっているという事実を受け入れることが精一杯で、親御さんは疲れきっていた。
私たちのサービス(訪問サービス)につながったのは、親御さんがもうどうすることもできないと途方にくれ、児童相談所にいったところ、市のこども発達支援センターを紹介されワーカーさんから、障害児のサービス提供はできませんか?との依頼がきっかけだ。
 
サービス契約時、親御さん、特にお母様の顔が疲れきっていたのを今でも覚えてる。
週に3回、2時間のサービスに入らせてもらうことになった。
私はそのうち週に2回サービスに携わることになった。
ご自宅に訪問し、2時間の中で食事介助と入浴介助を終わらせる。
 
Aちゃんのお母様は大変気遣い屋さんで、最初の頃は私たちがサービスに入ることで逆に疲れてしまうのでは?と心配だった。
 
Aちゃんとの関係性を築くのも大事だが平行して親御さんが私たち支援者に気兼ねなくサービスをこんな風にしてほしい。など要望を言える関係性を築くことも大事だと思った。
Aちゃんを取り巻く環境を少しでも良い方向にもっていけるお手伝いができるのが私たち支援者にとっては嬉しい。
 
体調が良い日や機嫌の良い時は、食事介助もスムーズだが人間だもの体調の悪い日もある。そんな時はお母様と相談しながら、食事介助をすすめた。
 
食事は全てペースト状態で提供。スプーンで一口ずつ食べてもらう。ごはんは、煮物が好きということも段々わかるようになった。
 
Aちゃんは、生まれたときから、あまりミルクを飲まなくお母様は悩んでいたそうだ。
離乳食も全部吐いていた。でも我が子にごはんを食べてもらいたい。飲み物を飲んでもらいたい。という一心で、毎日毎日嫌がる我が子に食事を強要していたと過去を振り返る。その目にはいつも涙が溜まっている。
 
なぜ我が子がごはんを食べないのか不安と葛藤で、病院を転々としたが原因は分からないまま、でも嫌がる我が子に食事を…という悪循環状態が1年続いたそうだ。
原因がわかったのはAちゃんが2歳をむかえたときだった。他県の病院を受診した時に、逆流性胃腸炎と診断された。
すぐに手術をした。それからは飲み食いもし体も大きく成長していった。
 
その話を聞いた私は、こんなに小さな体で逆流性胃腸炎になるのか…と胸が痛んだ。我が子に毎日毎日食事を強要していたお母様のことを思うともっと胸が痛んだ。
 
福祉の世界に携わり10年がたとうとしている。世は少しずつではあるが、障害者が認知されて理解されてきている。と、私は感じてる。でもまだまだ足りないと思っている。
 
もう過去には戻れないから仕方がないことだけど幾度となく私は親御さんから、幼少期の障害児の子育て苦労話を聞いてきた。障害児であろう健常児であろう子育ては大変なことだ。私が聞き手になったところで、何か役に立てることはないのだが、その度思うのが、一番苦労していたその大変な時期に誰かに親御さんが相談できたら、良かったのに…。と思う。
 
誰かに相談したからといって解決するわけではないけれど、辛いんだ。苦しいんだ。うちの子供だけ他の子供となんか違う。って漠然とした不安や違和感を少し話せたら…共感しあえたら…うまく言葉にできないけれど、1人で…親族だけで…抱え込むのはしんどいことだと思う。
 
どこに相談したらいいかわからない。なにをどうしたらいいかわからない。わからなくて当然だと思う。インターネットが普及している昨今、ネットで調べたら自分の住んでいる地域のサービスを知りえることは容易だと思う。しかし、いきなり市役所や行政に相談するのは、なかなか勇気がいることだとも思う。もし身近の誰かに相談できるなら、話して少し肩の荷が下りるなら、話してみてください。
 
お願いです、一人で抱え込まないで。

そして、自分を責めないでください。
Aちゃんのお母様も他のお母様も、「この子を健常に産んであげれなかったのは私です」「障害ゆえに伝わらなくて時に声を荒げてしまうことも反省してます」と仰る。
 
障害や病気は様々な要因がある。原因は1個ではない。
お母様が悪いわけでもないし、本人が障害で悪いことなんてない。
この世は生きづらい。決して障害者に優しい国ではない。
でも障害や病気に理解がある人も世の中にいることを忘れないでほしい。

身近な両親からの時として冷たい言葉を浴びせられることもあるかもしれない。世の中の視線は冷たいかもしれない。それを耐えることはとても辛いことだと思う。
だけど自分を責めないでください。
誰かに話をしてください。
身近に親しい人がいなければ、お住いの市役所のHPを覗いてみてください。
抱え込まないでください。
 
自分の子供に障害があることを受け入れるのに時間はかかります。
いいんです。みんなゆっくり事実を受け入れています。
 
誰に届くかわからないけれど、私の独り言です。

お母さんが元気ないと子供は悲しいです。
でも頑張りすぎないでください。
私たち支援者と一緒に悩みましょう。